これまでFX取引にMT4をつかっていましたが、諸事情によりMT5に移行することにしました。FX取引するときにMetaTraderを2つ立ち上げたいのですが、普通にmacOS版MT5をインストールしただけでは1インスタンスしか起動できません。macOS上でMT5を2つ動かすための裏技を説明します。
MT4とMT5の違い
以下のような複数のサイトによると、MT4よりMT5のほうが動作スピードが優れており、裁量トレード向きと言われています。MT4は歴史が長く、カスタムインジケーターやEAが豊富にあることが利点です。しかし、カスタムインジケーターやEAを使わないのであれば、トレーディングシステムとしては、MT5のほうがメリットがあります。
項目 | MT4 | MT5 |
動作スピード | 遅い | 速い |
時間足 | 9種類 | 21種類 |
気配値ウィンドウ | 機能が少ない | 機能が多い |
板情報 | なし | あり |
標準搭載のインジケータ | 30種類 | 38種類 |
カスタムインジケータ・EAの数 | 豊富 | 少ない |
赤字が良い点、青字が悪い点です。
MT5が利用できるFX業者
さて、MT5に移行しようと決断しても、利用しているFX業者がMT5に対応していなければ、MT5に移行できません。以下の複数のサイトによると、2023年5月現在、MT4/MT5へ対応している主要な業者は以下の通りです。
種別 | FX会社 | MT4 | MT5 |
国内 | FXTF | ○ | X |
国内 | 楽天証券 | ○ | X |
国内 | OANDA | ○ | ○ |
国内 | FOREX | ○ | X |
国内 | AVA TRADE(アヴァトレード) | ○ | ○ |
国内 | フィリップ証券 | X | ○ |
国内 | サクソバンク証券 | X | X |
国内 | IG証券 | X | X |
海外 | XM Trading | ○ | ○ |
海外 | AXIORY | ○ | ○ |
海外 | GEMFOREX | ○ | ○ |
海外 | BigBoss | ○ | ○ |
国内FX業者でMT5に対応しているのは、OANDA、AVA TRADE、フィリップ証券の3社しかありません。
海外は多くのFX業者が対応していますが、日本の金融庁の管轄外なので、いざというときの預金保護に不安がある人もいるでしょう。
MT5アプリを2つ同時に動かしたい
さて、実際にMT5を利用する場合には、MetaTrader社が提供しているMT5のソフトウェアをインストールする必要があります。お恥ずかしいことについ最近まで、「FX業者が提供しているMetaTraderソフトしか利用できない」と勘違いしていました。
実際にはMT4もMT5も macOS版が存在し、MetaTrader社のサイトで無料で公開されています。
ここからインストールすればmac版MT5はすぐ利用できるのですが、1台のMac上では 通常 1つのMT5しか起動できません。
FX取引の手法にもよると思いますが、時間足が異なるチャートをもつMetaTraderを2つ同時に利用したい場合があります。
macユーザーがWindowsソフトを利用する方法はいくつあります。その選択肢についてはこちらの記事にまとめました。
参考)【2022年完全版】MacユーザーがWindowsソフトを動かしたいときの対処法
本記事で紹介する方法は、「MetaTraderがmacOS上で動かない」と勘違いしていたときに、余分なお金をかけずにMetaTraderを動かす方法がないか、試行錯誤して生み出した方法です。
MT5自体が複雑なソフトではないため、macOS上で動作する無料のエミュレーターソフト”Wineskinserver”上でMT5を動かすことができます。
この方法により、mac版のMT5と、Windows版MT5が、同じmacパソコン上で同時に起動できるようになります。
実はこの方法を使えば、理論的にはいくつでもMT5のインスタンスを起動することができます。WineskinServerが仮想的に1台のWindowsパソコンとなるため、1つのWineskinごとに1つのMT5をインストールし、起動すればよいのです。
ただし、1つのMT5をインストールするごとに、ディスク容量を消費しますので注意が必要です。
Mac版MT5は、1.2GB程度、Wineskin上のWindows版MT5は、1インスタンスあたり2GB程度消費します。
WineskinServerを使ったMT5のセットアップ
MetaTrader社のサイトから、Windows版MT5のインストーラー(mt5setup.exe)を入手したあと、WineskinServerを設定します。
設定手順の概要は以下の通りです。
- Wineskin Wineryのインストール
- Wineskin Wineryの設定(実行Engineと Wrapperの選択)
- Wrapperの作成
- WrapperにMT5をインストール
- MT5の設定
- 設定ファイルの場所
- MT5が起動しない場合には
以下の記事ではおおよその手順だけ説明します。Wineskinの仕組みや、スクショをいれた詳細手順については、以下の記事にありますので参照ください。
参考記事)macOS 上でWindowsアプリを無料で動かす。WineskinServerの設定方法
1.Wineskin Wineryのインストール
GitHubのプロジェクトページから Wineskin Winaryの最新版をダウンロードします。
Wineskin.Winery.txzファイルを解凍し、Wineskin Winaryを起動します。
ダブルクリックすると、macOSのセキュリティ設定で開けませんので、右クリックしてメニューから「開く」を選択します。
2.Wineskin Wineryの設定
実行Engineと Wrapperをインストールします。
Add Engineをクリックし、実行Engineをダウンロード&インストールします。実行Engineの2023/5/6現在の最新版は ”WS11WineCX64Bit21.2.0-1”です。
次にWrapperのインストールです。Updateボタンを押し、ダウンロード&インストールします。
3.Wrapperの作成
「Create New Blank Wrapper」をクリックし、任意のWrapper名を入力します。
ここでは、”OANDA_MT5″とします。作成には数分かかることがあります。
完成すると、”Wrapper Creation Finished”のウィンドウが表示されます。
”View wrapper in Finder”をクリックすると、Wrapperの作成された場所がわかります。
通常は、\Application\Wineskin\のフォルダーに 上記で指定した名前”OANDA_MT5″で入っています。
4.WrapperにMT5をインストール
作成されたWrapperをクリックして起動し、”Install Software”をクリックします。
[Choose Setup Executable]を押し、MT5のインストーラー exeファイルを指定します。
インストーラーの最初の画面は文字化けする場合がありますが、無視して「次へ」を押します。
インストールが終わると、自動的にMT5が起動します。
5.MT5の設定
MT5の設定に移ります。
OANDAのMT5の口座情報をあらかじめ調べておき、「ファイル」–>「取引口座のログイン」でログインします。
サーバは ”OANDA-Japan MT5 Live”を選択します。
以上で、MT5の設定は完了です。このあと、インジケーターなどのカスタマイズを行います。
Wineskin上でインストールしたMT5を立ち上げるには、macOSのアプリケーションメニューに作成された以下のアイコンをクリックします。
WineskinからMT5を起動しようとしても再びインストールを求められることがあります。
MT5インストール後に、以下のようなWindowが残り続けたときに起きる現象です。
これは WineskinServerに登録されている起動時のexeファイルがインストーラーに設定されたままになっているために起きる現象です。
この場合は、”Advanced”をクリックし、”Windows app”欄に以下のファイル名(MT5の実行ファイル)を指定すると正しく起動するようになります。
“C:\Program Files\MetaTrader 5\terminal64.exe”
6.設定ファイルの場所
インジケーターやプロファイルなど、MT5の細かい設定を行う場合に、MT5のフォルダに直接アクセスしたい場合があります。その場合は以下の手順でWindowsのフォルダにアクセスします。
- Macintosh HD –>ユーザ–>(ログインアカウント名)–>アプリケーション–>Wineskin にアクセスします。
- “Wineskin”フォルダの下に、先ほどセットアップしたWineskinのパッケージがあります。これを右クリックして「パッケージの内容を表示」をクリックします。
- パッケージに含まれる Windowsシステムのディレクトリが表示されます。
drive_c –> Program files –> MetaTrader 5 以下が Wineskin上にインストールされたMT5が利用している各種設定ファイルです。「チャートのプロファイル」の設定はMQL5 –> Profiles –> Charts以下に、「チャートのテンプレート」はMQL5 –> Profiles –> Templates以下に保存されています。
7. MT5が起動しない場合には?
以上のような設定を済ませ、アイコンをクリックしてもMT5が起動しないことがあります。その場合は以下の手順で強制的に起動することができます。
1.Wineskinのパッケージの内容を表示します。(上記手順#6の1,2)
2.アプリケーション「Wineskin」をダブルクリックして起動します。
3.Wineskinアプリのメニューから”Advanced”を選択します。
4.右下の「Test Run」をクリックすると、MT5が起動します。