用事があり急遽ロサンジェルスに飛ぶことになり、国際線の格安航空会社ZIPAIR(ジップエア)を利用しました。ZIPAIRの航空券代は格安で大変ありがたかったのですが、その反面、不満な点がいくつかありました。ZIPAIRの安さのメリットを享受しつつ快適に旅するための注意点を、成田ーロサンゼルス間のフライトをもとに説明します。
ZIPAIRとは?
ZIPAIRは日本航空(JAL)の完全子会社で、2020年6月3日から運行開始した日本発の国際線専門のLCC(格安航空会社)です。
東京-成田国際空港を拠点として着実に路線を広げてきており、2023/9月現在、世界5カ国8都市に定期便を運航しています。
(出典:ZIPAIR公式)
2023年9月時点での旅客定期便の運行都市は、下記の通りです。
就航国 | 空港・都市 | 定期旅客便運行開始 |
韓国 | ソウル / 仁川国際空港 | 2020/10/16 |
タイ | バンコク / スワンナプーム国際空港 | 2020/10/28 |
アメリカ | ホノルル / ダニエル・K・イノウエ国際空港 | 2021/7/21 |
シンガポール | チャンギ国際空港 | 2021/9/7 |
アメリカ | ロサンゼルス国際空港 | 2021/12/25 |
アメリカ | ノーマン・Y・ミネタ・サンノゼ国際空港 | 2022/10/12 |
アメリカ | サンフランシスコ国際空港 | 2023/6/2 |
フィリピン | マニラ / ニノイ・アキノ国際空港 | 2023/7/1 |
ZIPAIRの良い点
ZIPAIRには、格安航空会社ならではの、あるいは、格安航空会社にしては驚きの以下のようなサービスが提供されています。
航空券がとにかく安い
ZIPAIRの最大のメリットは航空券代がとにかく安いということです。
「Expedia」や「トラベルコ」などの航空券比較サイトで格安航空券を探すと、大手航空会社の航空券でも格安で探せることもあります。しかし、出発まで2、3ヶ月を切ると、急に料金が高くなります。ZIPAIRの場合には直前予約でも安定して安い点が大きなメリットです。
私が利用した 東京ーロサンゼルス間のフライトを例にみてみましょう。
東京ーロサンゼルス間は世界の主要な航空会社が路線を就航させている激戦区です。3ヶ月以上先のフライトであれば、外資系航空会社で格安航空券が手に入ります。では3ヶ月に満たない場合はどうでしょうか?9月中旬に予約したときに、1ヶ月、2ヶ月, 3ヶ月後のフライトがいくらぐらいになるのか調べてみました。
出発 | LAX到着時刻 | 10/18発 | 11/28発 | 12/14発 | |
ZIPAIR | 成田 | 7:30 | 53,534 | 58,562 | 52,062 |
デルタ航空 | 羽田 | 10:40 | 62,210 | 77,280 | 49,150 |
アメリカン航空 | 羽田 | 6:00 | 60,450 | 79,250 | 49,736 |
ユナイテッド航空 | 羽田 | 12:35 | 246,045 | 247,710 | 48,850 |
シンガポール航空 | 成田 | 11:15 | 146,819 | 148,787 | 85,872 |
ANA | 羽田 | 12:35 | 245,159 | 246,767 | 245,656 |
JAL | 羽田 | 6:00 | 271,850 | 271,850 | 271,850 |
予約をとるタイミングと出発日次第で、料金は大きく変更しますが、傾向はあります。
ANA,JALはいつでも安定した値段で、時期問わず安くはなりません。
ユナイテッド、シンガポール航空は、2ヶ月を切ると急に値上がりします。
デルタ、アメリカンは1,2ヶ月先でも比較的安い値段を保っていますが、ZIPAIRのほうが安定して安い航空券を提供しています。ただし、この料金には渡航費、燃油費などの基本的な費用だけです。後に説明する手荷物、預け荷物、食事などのオプションをつけた場合には、大手航空会社と値段が逆転することもありえます。予約するときには注意が必要です。
余談ですが、北米便に限っていえば、到着時間が朝の7:30というのもおすすめなポイントです。LAXは午後になると混んできて入国審査に時間がかかりますが、早朝なら比較的スムースに入国できます。旅先で朝から活動したい場合に、この時間帯は重宝します。
機内Wi-Fiが無料
ユナイテッド航空などは、機内Wi-Fiを有料で提供していますが、ZIPAIRは格安航空会社にもかかわらず、無料でWi-Fiを提供しているのが驚きです。ただし、通信速度は 数M bps程度なので、テキストのやり取りや、画像を時間をかけてなんとか1枚遅れる程度です。動画の視聴には耐えられません。また提供時間は、飛行機が安定飛行に入っている間のみで、離陸から水平飛行に入るまでと着陸のため降下し始めた後は、Wi-Fiは使えないようです。
ZIPAIR利用時の注意点
一方、ZIPAIRには、格安航空会社(LCC)ならではの不便な点もあります。
1.予約変更・払い戻しは一切できない
格安航空券であるがゆえの縛りですが、ZIPAIRの場合には、乗客の都合で予約変更、払い戻しは一切できないため注意が必要です。航空会社の都合でフライトがキャンセルになった場合は当然払い戻しは行われます。
2.機内エンタメはない
ZIPAIRの座席は非常にシンプルで、モニターはありません。スマホやタブレットなど自分の携帯電子機器を使えば、機内Wi-Fi経由で簡単なフライトマップは見られます。また機内Wi-Fi経由で映画も何本か提供されているようですが、この程度のラインナップでは個々人の好みを満たすことはおそらく難しいでしょう。
WiFiがつながるといっても動画を見れるほどの通信速度ではないため、自分が契約している動画配信サービスを機内で見られるわけではありません。
このため北米便のような長時間のフライトでは、寝られない人はなんらかの対策をとらないと退屈でたまりません。(対策をとらないと地獄を見ることになります)
私の周りの席の旅慣れた方は、NetflixかAmazonの動画をスマホやタブレットにダウンロードして、機内で何時間も視聴していました。
3.旅客運賃以外のオプションはすべて有料
ZIPAIRでは、基本的な旅客運賃以外、以下のようなオプションはすべて有料となります。しかも大部分が事前予約が必要です。
- 預け荷物
- 機内持ち込み手荷物
- 食事
- 飲み物
- 軽食
- アメニティ
預け荷物は、規定サイズ(3辺の和が203㎝以下)を満たす合計5個まで。重量は14kg、23㎏、32㎏の3段階で料金が決められており、行き先によっても料金は異なります。
手荷物は、規定サイズ(1個目:40×25×55㎝、2個目:35×25×45㎝)を満たす合計2個までと決められています。
特に気をつけたいのが機内持ち込みの手荷物重量制限です。
大手航空会社では機内持ち込み荷物に重量制限というのは聞いたことがありません。しかしZIPAIRの場合、機内持ち込み荷物の重さに合計12㎏という上限があります。また料金7㎏までが無料、7kg超えた場合には追加料金を支払うことになります。しかも、空港で重量オーバーが判明するとやっかいで、
・機内持込手荷物の追加料金は、当日空港での購入はできない。
・制限を超えた場合は受託手荷物として預けさせられる上、空港カウンターで購入すると、別途1,000円事務手数料がかかる
というルールがあります。
私の場合には、小さいキャリーバッグを機内に持ち込む際はサイズ制限があるのは知っていたので、注意していたのですが、この重量制限に1kgひっかかってしまい、預り荷物に変更させられた上に追加で6,500円も空港で支払うハメになりました。
「注意事項を隅々まできちんと読んでいない乗客の責任」といえばそれまでなのですが、この「機内持ち込手荷物重量制限」は騙し討ちにあったみたいでかなり気分が悪いものです。
なお、この悪習は10/29からのフライトから改善がされるようです。しかし、依然として大手航空会社にはない独自の制約事項は残ります。利用される方は事前に十分読んで対応が必要です。
4.食事
食事の味は「可もなく不可もなく」、おなかは満たされるレベルです。私の頼んだのは「スパイシーチキンライス」と「鶏もも肉のグリル レモンガーリッククリーム添え」でした。ペットボトルの水は1本付いてきます。
機内食は航路ごとに異なり、こちらのサイトで確認できます。
ただしウェブに掲載されている写真と機内で提供される実物はかなり異なりますのでご注意ください。下の写真で上段がウェブサイト、下段が実物です。
スパイシーチキンライス | 鶏もも肉のグリル レモンガーリッククリーム添え |
気になる方は、搭乗前で空港で食べてきて乗車するとよいでしょう。
5.寒さ対策
飛行機のフライトでは、座席に毛布がおいてあり、寒いときには追加でもらえたりします。しかしZIPAIRでは毛布の無料提供はありません。搭乗の24時間前まで(海外発は48時間前まで)に、毛布も入ったアメニティセットを購入しておくか、自分で防寒着を持ち込む必要があります。
6.発着が成田空港のみ
発着枠の確保のためかと思いますが、人気の羽田空港発着の便はなく、すべて成田空港発着便です。
「羽田空港には行きやすいけれども、成田空港は行きづらい」という人には、成田空港までの移動の時間とお金を考慮すると選択しづらい場合もあります。
7.ポイントとマイレージ
ZIPAIRでのマイレージは、いったんZIPAIRポイントにたまります。
ZIPAIRは、JALの完全子会社ですが、JALのポイントが直接つくわけではなく、ZIPAIRポイントとJALのマイレージポイントの相互交換でお互いのポイント利用を行います。
交換レート:2 ZIPAIRポイント⇒1 マイル
ZIPAIRはこんな人におすすめ
ZIPAIRには、格安航空会社ならではの独特な制約事項はありますが、デメリットをしっかりと理解して対策すれば、旅行者にとって非常によい選択肢になります。
ZIPAIRが特に向いているのはこんな人です。
- 航空券に移動だけを求め、余計なサービスを求めない人
- 値段をとにかく安くしたい人(長距離夜行バス)
- 出発まで2ヶ月を切る急な旅行で、安い航空券が探せなかった人
- 荷物対策、ひまつぶし対策、寒さ対策を取れる人(規定を読み込んで対策できる)
- 成田空港発着を許容できる人
- マイレージを気にしない人
アメリカの西海岸とハワイ、ソウル、バンコク、シンガポール、マニラなど人気の都市をカバーしていますし、フライトの着陸空港と到着時刻は 利便性が高いものになっています。
これらの都市への旅行を計画している人は、ぜひ一度選択肢の1つにいれてみてはどうでしょうか。