FXのスイングトレードで成功するための1材料として実効為替レート(Effective Exchange Rate)を活用している人たちがいます。実効為替レートとはどんなもので、どのようにFXトレードで活用するのか調べてみました。
- 実効為替レートとは?
- 通貨インデックスとの違いは?
- 実効為替レートのデータをどこで入手するか?(日銀)
- 実効為替レートのデータをどこで入手するか?(BIS)
- データの加工・比較方法
- FXにどう役立てる?
実効為替レートとは?
為替相場に関するニュースをみていると「実効為替レート(Effective Exchange Rate)」という用語が出てきます。FXのスイングトレードをしている一部の人たちの間では、この実効為替レートも参考にしながらトレード戦略を立てている場合もあると聞きます。
なぜ、「実効為替レート」が注目されるのでしょうか?それは、実効為替レートが、ドル円、ユーロ円などの個別の通貨ペアにおける為替レートよりも、世界のマーケットにおけるその通貨の真の実力を反映していると考えられるからです。
実際には、実効為替レートには2種類あり、以下のような違いがあります。
名目実効為替レート (Nominal Effective Exchange Rate) |
主要な貿易相手国や地域の通貨の為替レートの変化率を貿易額の比重で加重平均して指数化したもの |
実質実効為替レート (Real Effective Exchange Rate) |
名目実効為替レートからインフレによる通貨価値の下落分を差し引いて加重平均したもの |
(出典: 実効為替レートとは?)
通貨インデックスとの違いは?
特定通貨の価値の強さを表す指標として、「通貨インデックス」というのもあります。具体的には「ドルインデックス」「円インデックス」「ユーロインデックス」などです。
通貨インデックスも特定通貨の相対的な価値を示すものとして参考にされます。複数通貨との交換レートをもとに割り出された指標ではありますが、「実効為替レート」と違い、貿易額やインフレによる通貨価値の下落などは考慮されていない点に注意が必要です。
通貨インデックスは、MT4, MT5やTradingViewなど著名なFX取引ツールでは、比較的簡単に入手し、トレードで活用することができます。
参考)円インデックスとは?正しい見方とトレードでの活用方法を徹底解説!
実効為替レートのデータをどこで入手するか?(日銀)
「通貨インデックス」については、FX取引ツールで簡単に入手でき、特定通貨ペアの為替レートと比較し、分析することもできます。しかし、実効為替レートについては、手軽に入手してFX取引ツールに取り込むことができません。
まず入手の方法についてですが、円の実効為替レートについては、日本銀行の時系列統計データ検索サイトでも入手することができます。場所が非常にわかりにくいのが難点ですが、「マーケット関連」–>「実効為替レート[FM09)」でデータを入手できます。
「FM09’FX180110001(名目実効為替レート指数)」と「FM09’FX18011002(実質実効為替レート指数)」が現在も更新されているデータで、日銀のサイト上で推移をグラフ化して比較することもできます。
日銀のデータの問題点は、月次でしかデータが取れないことです。
これでは、日次でデータを判断してエントリーポイントを決めたい場合には役に立ちません。
しかも、ドルやユーロなどの他の通貨の実効為替レートと比較したい場合には、日銀のサイトからはデータがとれません。
複数の通貨について実効為替レートを比較・分析したい場合には、別のサイトを参照することになります。それが、BIS(Bank for International Settlements、国際決済銀行)が管理するBIS Data Portal となります。
実効為替レートのデータをどこで入手するか?(BIS)
BIS(国際決済銀行)は、第1次世界大戦後のドイツの賠償支払いに関する事務処理をするために発足しましたが、現在は、中央銀行間の政策協力の促進や預金受け入れなど多様な業務を行っています。各国の中央銀行との取引を通じ、外貨準備の運用などを支援する「中銀のための銀行」とも呼ばれています。(参考:国際決済銀行(BIS) / 野村證券)
BISのData Portal サイトでは、ほぼ全世界の様々な経済指標に関するデータが管理されていますが、実効為替レートについても Narrow(世界27経済地域のデータ)、Broad(世界64経済地域のデータ)の2種類について、名目・実質、日次・月次のデータが提供されています。
Effective Exchange rateのアイコンをクリックし、検索窓で”Japan”と入力すると、円の実質為替レートに関する6つのデータが表示されます。
英語が並んでわかりにくいですが、レポートの種類について補足すると以下の通りです。
Code | Report Name | 更新頻度 | Type | 比較対象地域 |
D.N.N.JP | Nominal effective exchange rate, Japan / Narrow basket | Daily | 名目 | 27地域 |
D.N.B.JP | Nominal effective exchange rate, Japan / Broad basket | Daily | 名目 | 64地域 |
M.R.N.JP | Real effective exchange rate, Japan / Narrow basket | Monthly | 実質 | 27地域 |
M.M.N.JP | Nominal effective exchange rate, Japan / Narrow basket | Monthly | 名目 | 27地域 |
M.R.B.JP | Real effective exchange rate, Japan / Broad basket | Monthly | 実質 | 64地域 |
M.N.B.JP | Nominal effective exchange rate, Japan / Broad basket | Monthly | 名目 | 64地域 |
長い名前のままだと、どのレポートが何を表しているのかわかりにくいですが、省略コードのネーミングルールを理解してしまうと、自分の欲しいレポートがどれなのか、見つけやすくなります。
インフレによる通貨価値の下落分を差し引いて加重平均した「実質実効為替レート」は、月次データしか入手できないため、日次データでトレードのタイミングを計りたい場合には、「名目実効為替レート」を使うことになります。
データの加工・比較方法
さて、実際のBISの実効為替レートのデータですが、日本円の日次、Narrow Basketのデータを取り出してみると以下のようになります。
1983年からの日次データとなると、平日のデータだけでも1万行を超えます。Excelでグラフ化したり、分析できないこともないですが、以下のようなことを定期的に行うには、Excelだけで完結させるのは手間がかかりすぎ、処理も重くなって難しそうです。
- 一部を切り出して分析
- 他の通貨の実効為替レートと比較
- 特定通貨ペアの為替レートと比較
- 特定通貨のインデックスと比較
その場合は、複数の時系列データの処理、分析が得意なMATLABやPythonなどのプログラミングツールを使ってデータ解析を行うのが良さそうです。
FXにどう役立てる?
「実効為替レート」は、「通貨単体の実力を図るための(唯一の)総合的な指標」と言われています。
そのため「実効為替レート」は、「ドル円など特定通貨ペアの為替レートが、投機筋の動きによってエスカレートしていないか」ですとか、「ある国が意図的に自国通貨安を誘導し、不当に貿易に有利になるような政策をとっていないか」などの政策判断に用いられることがあります。
またデータ更新頻度が最低でも日次であるため、スイングトレード以上の取引で有効なデータとなります。
そのため、日次・週次・月次の為替レートの節目をチェックするだけでなく、実効為替レートのサポートやレジスタンスをみることで、スイングトレードの精度を上げる根拠として利用することが考えられます。