2024年夏季オリンピックが開催されるフランス。コロナ禍も明け、これから旅行先にフランスを選ぶ人も多いことでしょう。フランス旅行で利用できるプリペイドのデータ通信SIMについて解説します。
- フランス旅行でのデータ通信の選択肢
- フランスの携帯通信キャリア
- フランスの4大携帯通信キャリアのプリペイドSIM
- その他のプリペイドSIM(日本で購入可能)
- まとめ:フランスのプリペイドSIMのおすすめは
フランス旅行でのプリペイドSIMの選択肢
日本の大手キャリアでは、海外でも現地のキャリア回線を利用したデータ通信サービスを提供しています。しかし、これらのサービスを使って旅行中にデータ通信をすると高額なローミング料金がかかってしまいます。そのため、フランス旅行では、フランスのモバイルキャリアの回線を利用したプリペイドSIMカードを利用するのがおすすめです。フランスには4大モバイルキャリア(Orange、SFR、Bouygues Telecom、Free Mobile)があり、それらの回線を利用したMVNO(Mobile Virtual Network Operator)の格安SIMも多数あります。また、2018年以降はSIMカードの他に、eSIMも使えるようになったため、選択肢がかなり広がっています。
本記事では、フランス国内で利用できるプリペイドSIMの種類、特徴、料金体系について説明するとともに、おすすめのプリペイドSIMについて解説します。
フランスの4大携帯通信キャリア
まずはじめに、フランスのモバイル通信事情について説明します。
フランスにはOrange、SFR、Bougues Telecom、Free Mobileの4つのモバイル通信キャリアがあります。2012年のFree Mobileの新規参入により価格競争が激化し、この10年で通信料金が大幅に下がったと言われています。
参考記事)第4のキャリア参入から10年経ったフランス、その間にケータイ料金は平均で7割ダウンした
各社の特徴は以下の通りです。
Orange
フランスの通信事業者であるOrangeは、フランス国内最大の携帯キャリア事業者であり契約者数約2,000万人を抱えています。広範囲な通信エリアを持ち、フランス全土で高速かつ安定した通信品質を提供しています。 |
SFR
フランスのモバイル通信事業者であるSFRは、契約者数約1,500万人を抱えています。SFRの強みは、高速・安定した通信品質と料金がやや安めであることにあります。一方で、Orangeに比べるとカバレッジがやや劣ることが弱みと言えます。 |
Bouygues Telecom
フランスで3番目に大きい通信キャリアであるBouygues Telecom(ブイグテレコム)は、契約者数約1,300万人を抱えています。携帯電話市場の競争激化に伴い、OrangeやSFRからの買収対象として名前が上がったこともあります。通信エリアは広いものの、OrangeやSFRに比べるとカバレッジはやや劣る傾向にあります。 |
Free Mobile
2012年のフランスの第4の携帯事業者として登場したFree Mobileは、シンプルかつ価格破壊的な料金プランで、フランスの携帯電話市場に競争激化をもたらしと言われています。2021年時点の加入者数は 1,200万人で、SFRやBougues Telecomに迫るまでに成長しています。 |
日本の携帯通信キャリアがフランス国内でデータ通信のローミングサービスを提供する場合、あるいは、MVNOの格安SIMがデータ通信サービスを提供する場合も、これらの4社のうちのいずれかの通信キャリアの回線を利用しています。
フランスの4大携帯通信キャリアのプリペイドSIM
次にフランスの4大通信キャリアが、海外からの渡航者向けにどのようなプリペイドSIMを提供しているか紹介します。
Orange Holiday
フランス国内旅行、あるいは周辺国を旅行するのに、もっとも信頼がおけるプリペイドSIMの1つは、「Orange Holiday」でしょう。Orange社は、フランス国内において最も歴史があり、通信エリアも広く、加入者数が多いモバイル通信キャリアです。日本におけるNTTドコモと同等の位置づけと考えるとイメージがしやすいでしょう。そのOrange社が海外旅行者向けに提供しているのが「Orange Holiday」です。
このプリペイドSIMの特徴は以下の通りです。
- フランス国内だけでなく、ヨーロッパ域内でも利用可能
- 14日間有効
- データ容量 20GB
- 期間延長もデータ増量も可能
- SIMカードとeSIMに対応
eSIMの場合にはクレジットカードがあれば世界中どこからでも購入が可能です。
eSIMに抵抗感がある方は、日本国内でamazonでSIMカードを事前に購入しておくことが可能です。
Orange Holiday プリペイドSIMカード
14日間有効 データ容量:20GB 国際電話 120分 付き 6,360円 |
通信品質が良い分、他の格安SIMに比べると、データ容量あたりの価格は若干割高になります。しかし、フランス入国後にSIMカードに関する手続き、トラブル対応で時間を無駄にしたくない人、フランス国内どこでも一定の通信品質を得たい人にはおすすめです。
Free Mobile
フランス国内、特に都市部に比較的長期に滞在する人におすすめなのは、Free MobileのプリペイドSIMです。Free mobileはフランスの第4の携帯キャリアです。位置づけとしては、日本における楽天モバイルをイメージするとわかりやすいでしょう。
購入は月額契約のみです。契約は自動更新ですので、海外旅行者は滞在終了後、契約解除手続きをとる必要があります。
料金体系は、価格破壊的な安さです。短期滞在の旅行者には、110 GBも使えて たったの12.99ユーロ(日本円で約 1,900円, 147円/ユーロで換算)のSérie Freeプランがおすすめです。
プラン名 | Série Free | Forfait Free 5G |
データ容量 | 110 GB | 210 GB |
月額料金 | 12.99ユーロ | 19.99ユーロ |
私も 2017年にパリに滞在したときにFree MobileのプリペイドSIMを利用したことがありますが、パリ市内では通信速度の速さと価格の安さで、非常に満足度の高いプリペイドSIMでした。
ただ、Free mobileを利用するときに注意すべき点がいくつかあります。
1.言語の問題
まず1つ目が言語の問題です。Free Mobileはフランス国内の利用者を中心に考えているため、Webサイトや店舗の端末はフランス語での表記のみです。英語での説明はありません。Google翻訳などで日本語に変換すれば解読できなくはないですが、ネットでも現地でもSIMの購入は、難易度が高くなります。
2.物理SIMカードが入手しづらい
2つ目が、SIMカードの入手の難しさです。
Free MobileのSIMカードは、Amazonなどで事前購入はできません。海外旅行者はフランス国内に入国してから購入する必要があります。物理SIMカードを購入できる店舗と無人端末は、フランス全土に1,000以上あります。
問題は、これらの店舗や無人端末が、必ずしも海外旅行者にとって便利な場所にはないことです。
たいていの旅行者が最初に通過するシャルル・ド・ゴール国際空港の周辺には、残念ながら1台もありません。購入したければ市内に移動し、ショップや無人端末を探し出して手続きをする必要があります。
また、購入場所の検索サイトはフランス語なので、現地の地理に不慣れな日本人にはハードルが高いでしょう。
パリ市内のFree Mobileの店舗。(”f”マーク)。これ以外にも無人端末は多数存在します。 |
ショップに設置してある購入端末の言語がフランス語というのも、難易度が増します。
現在は状況は落ち着いているかもしれませんが、2017年にパリ市内の店舗を訪れたときには、店内が非常に混雑していました。自動契約の端末の前に多くの利用者が並ぶ中、フランス語がわからず端末の前でまごまごしてしまい、後ろに並ぶ人を気にしてかなり気まずい思いをした記憶があります。
Free Mobileの有人店舗入口。2017年当時の旗艦店は斬新なデザイン | Free Mobileの店舗に設置されている自動購入端末。表示はフランス語、購入はクレジットカードのみ (2017年当時) |
Free MobileのプリペイドSIMの購入方法についてはこちらのサイトでわかりやすく紹介されています。。
フランス・パリのSIMカードはfreeで決まり!購入方法・料金・注意点徹底解説
3.都市部以外での通信速度に注意
3つ目の注意点は通信エリアと通信品質です。Free Mobileの通信エリアマップを見てみると、おおよそフランス全土を4G通信でカバーしているように見えます。
しかし、日本でも事情は同じですが、格安SIMの品質は、実際につかってみないとわかりません。通信エリアマップ上はカバーできているように見えても、特に郊外・地方において実際に通信がつながるか、通信速度が利用に耐えうるかは未知数なのです。
Free Mobileが2012年に設立された新興モバイルキャリアであることを考えると、通信エリアのカバレッジや通信品質には注意が必要かもしれません。Free Mobileは、設立からすでに10年が経過しており、2020年にMNO化した日本の楽天モバイルほど社歴は浅くないので、それなりの実力はあると思います。しかし、古参のOrangeよりは事業歴が浅いため、特に地方において通信品質に差がある可能性はあります。
大きな都市や有名な観光地を移動するだけでしたら、それほど問題は起きないように思います。
Free Mobileの通信エリア |
SFRとBougues Telecom
「SFR」と「Bougues Telecom」については、日本で事前購入できるプリペイドSIMカードはありません。また、言語の問題(英語非対応)もあり、日本人が購入しやすいウェブサイトでもありませんし、価格体系や通信エリア、通信品質においても「Orange」社や「Free Mobile」と比べ、特に大きな優位点はありません。
そのため、海外旅行者は検討対象から外しても良いと思います。
日本で買えるその他のプリペイドSIM
フランスの4大キャリアが提供しているプリペイドSIM以外にも、MVNO(仮想移動体通信事業者)が提供しているプリペイドSIMがあります。Orange Holidayより価格が安い点が魅力です。
MVNOのプリペイドSIMの購入には2つの方法があります。
- SIMカードを日本で事前購入(Amazonなど)
- eSIMを購入
SIMカードを日本で事前購入(Amazonなど)
日本で事前購入できるMVNOのプリペイドSIMはいくつかあります。フランスだけでなく、ヨーロッパ地域の複数国で通信できるものがほとんどです。そのうち代表的なものを紹介します。
1点気をつけていただきたいのは、これらのMVNOのプリペイドSIMは、通信品質に対して過剰な期待はしないほうがよいという点です。
私が2017年にフランスを訪問したときは AISのSIM2FlyというプリペイドSIMを事前購入して持っていきました。しかし、通信速度も遅く、接続も不安定(キャリア設定を「自動」にすると、場所によって接続先のキャリア回線がSFR→Free→Bouyguesとコロコロ切り替わる)で閉口しました。
これらのSIMを利用する場合には、現地でのWi-Fiスポットを利用しつつ、「つながればラッキー」くらいに考えておいたほうがよいかもしれません。
Three ヨーロッパ プリペイドSIMカード
「Three ヨーロッパ 」は フランス以外のヨーロッパ各国でも利用でき、現地での無制限通話がついたプリペイドSIMカードです。
Three ヨーロッパ プリペイドSIMカード(mewfi)
30日間有効 データ容量:10GB 現地無制限通話付き 1,980円 |
DHA SIM for Europe
DHA SIM for Europeは、ヨーロッパ 42カ国で利用できるプリペイドSIMカードでAmazonで事前に購入できます。
DHA SIM for Europe プリペイドSIMカード
10日間有効 データ容量:5GB 現地無制限通話付き 2,232円 |
eSIMを購入
eSIMの場合には、日本でも現地でも世界中どこでも購入することもできます。
購入できるサイトは、UbigiやSimOptionsなどがあります。
しかし、ネットでの購入(英語)も、eSIMの設定や現地で接続できなかったときのトラブルシューティングも若干難易度が高めです。
「どのキャリア回線を使っているのか」、「通信エリアやサービス品質はどうなのか」、「自前のスマホ端末が対応しているのか」などの情報が少ないため、事前に購入できても現地で使えるのか不安はあります。
したがってこの方法は、eSIMについて詳しい、あるいは日本での利用経験がある方、また、英語サイトでの情報収集と購入に抵抗感がない方にのみ、おすすめします。
まとめ:フランスのプリペイドSIMのおすすめは
フランス国内で利用するプリペイドSIMについて、選択肢と特徴をかんたんにまとめると、以下のようになります。
項目 | Orange Holiday | Free Mobile | MVNO |
日本での事前購入 | ○ | X | ○ |
料金 | △ | ◎ | ○ |
データ容量 | ○ | ◎ | ○ |
通信エリア、通信速度 | ◎ | ○ | △ |
情報入手(英語or日本語) | ○ | X | ○(amazon) △(eSIM) |
フランスでのプリペイドSIMの選択肢は大きく3つありますが、旅行の期間、現地での行き先や旅程のゆとり度合い、フランス語に対する自信、SIMの設定知識の度合いによってご自身にあったものを選んでください。
旅行のスタイル、SIMに対するニーズ | おすすめのSIM |
|
→ Orange Holiday |
|
→MVNOのプリペイドSIM(Three, DHAなど) |
|
→Free Mobile |